★文月二十七日

(はやい...)

得てして現代は早さが肝である。"便利"という言葉の影に、常に迅速性が求められている。効率がよくなくてはならない。コンビニですばやく食料を調達し、フェイスブックで即座に情報を交換する。飛行機ですばやく移動して、原発で効率よく電気をつくる。総理大臣も臨機応変に替えるのが得策である。果ては最新兵器ですばやく多数の人間を殺める。西洋医学が持つ即効性に似ているとでも言うべきか。現代は有り得ないほどの速力でもって動いている。本来有り得ない事だからこそ、それらには科学力や技術力が必要とされ、推進力に資本を、潤滑油に悪知恵をといったところが求められる。つまりウラがある。果たしてコンビニの食料は食べ物なのか?フェイスブックで得た情報は本当に早急性が求められている事柄なのか?飛行機は大気に何を撒き散らしているのか?住めない土地をつくった原発は効率がよい発電方法と言えるのか?総理大臣は誰のための人間なのか?抗癌剤は身体の中でどのような事態を巻き起こしているのか?そして人々は"迅速性"によって獲得した"時間"をどのように使っているのか?疑問は湧水の如く流れ出るばかりである。釘を刺す様だが、科学や技術に雞知を付けたい訳ではない。本来それらは人々の幸せのためにつくられたはずであり、更に付け加えるならば、

(この世のためにあるべきだ)

とただそう思っているのである。しかし現状の限りはまず、その様に成就してはいないだろう。つまり"誰かのためのもの"に成り下がっていると見る。

(憂いな...)

下は中世の公家に流行った今様、"影法師"である。


影法師


雪かあられか大宮の

月の宮居のわびすまい

世を憂いしと住む影法師

憂いしや憂いし

酔(え)うも憂いし

うたうも憂いし

恋うるも憂いしや影法師


世は憂いものであるらしい。否、人が憂い存在なのかも知れない。失ったものは多大である。コンビニによってなくなった日本中の商店街。フェイスブックでなくなった井戸端会議。飛行機でなくなった馬車。原発でなくなった共同体。政治によってなくなった...。

(止めておこう)

冷笑が浮かんできた。

(愚痴っぽくなっても仕方あるまい)

トドの詰まりが自分次第なのだ。

(誰に言っているのやら...)

である。日記というこの場故の乱筆乱文の赦免を願ってここいらで筆を擱く。


文月二十七日


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