★越後はぐれ旅

 六畳一間の暗がりで、米油の蝋燭が焔を揺らしている。

(越...)

撓わに実っていた稲穂は刈り取られ、田園に静寂が流れているこの季節。僕は越の地へ出掛けた。

(越後はぐれ旅...一人越後のどさ回り...)

どちらにしても上手くはない。広大な盆地の碧空には、長い雲が白い筋を引いている。

(今年はどうだったのだろうか?豊年だったのかな...?)

数週間前に新潟を訪れた際には、コウベを垂れていた稲穂の姿を見ていただけに、期待もするが...。

(稲刈りの時期に雨が多かったとは聞いた...)

越後は高田。南方に妙高の峰々を望み、北方の直江津に日本海を面している。古い街並を保存する美しいところである。冬は滅法雪深い。春日城は天下に聞こえる上杉謙信の根城。その城下町である高田は、”雁木”と呼ばれる古い街並をこの平成の世に残している。ここに嘗て、昭和まで"瞽女(ごぜ)さん"という、盲目の唄歌いの女性たちに依る、農村地帯を取り巻く音楽文化が存在した。"高田瞽女"と云う。年間300日に及ぶ唄行脚をこなす盲目の女性たち。"親方"を中心に受け継がれる共同体の古風な暮らし。だが、昭和43年を最後に唄行脚が途絶え、平成に入って血筋が絶えた。現在は保存、紹介、伝承等に力を注ぐ素晴らしい方々が支えている。思うに日本の文化が産んだ民衆音楽の遺産である。そんな"瞽女さん"であった杉本キクイさんを伝える映画、シンポジウム、ライブを体験する事が出来た。

(むぅぅ...)

"瞽女さん"の唄、演奏は素晴らしいものだった。それらは暮らしの中で受け継がれていたし、"与える"と"得る"だけではない文化で成っている。ビジネスを越えた交流。ぐるぐる廻りに廻っている、循環の輪で成り立つ関係。"瞽女さん"を尊ぶ人々が居て、暮らしが在り、信仰までが有る。又、"瞽女さん"もその循環を大切に暮らしを育んでいる。昭和末期に途絶えて平成に入って消えた、鎌倉時代から受け継がれた"瞽女さん"という存在を思うとき。

(何故...?)

と考えざるを得ない。と言うのも、様々な文化や伝承に於いて、"昭和"から"平成"に架けて、多いに失われたと思われる節があるからである。

(見事に平らにのっぺりと成ってはいまいか,,,?)

と思われる要素が多分にある。それが何を意味するかは現状が語っているのではないだろうか。この国では、"平"という字が入る年号は、かつてから凶事が多かったため避けられたという。

(消えた祭がいくつあるだろう?消えた地名が、音楽が、料理が、建築技術が...暮らしが...)

言い出したら切りがないというヤツである。土地の名前にしても、"瞽女さん"にしても、食文化にしても、建物にしても...。

(この25年間で消えてしまったものは多大ではあるまいか?)

そして...。

(新しい"決まり"はオレ達を更にのっぺりさせようとしてはいまいか?)

と考えるのは大袈裟なのだろうか?大都会で暮らす孤独な旅烏の"考え過ぎ"というやつだろうか?

(だったら幸いなのだが...)

高田の夜はバー"JAZZ SWING"にて宴を催してくれた。

(有り難き幸せ,,,)

ゆるりと流れる時間につられて飲みに飲んだし、唄いに唄った。

(楽しい素敵な夜でした!)

翌日は"VENTE"一行と新潟は内野へとひとっ走り。いつもお世話になっている"BB STONES"の地元での祭へ呼んでくれた。その名も"内野 DE 宇宙まつり"!

(サイコーでした!)

地球は宇宙に浮かんでいる。誰もが知る神秘な事実。

「いつまでも平和であってほしいな〜」

と呟いたしんちゃんの横顔が目に浮かぶ。

(身共は現代を渡り歩く、"瞽女さん"の様な存在でありたい...)

と思う。今のところ大丈夫かな?

(なんとかやってる...)

みんなのおかげで。

(ありがとう!)


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