★吉備の山

 日本列島には山の麓に生活圏をおく集落が数多く見られ、まさに”山”の”間”に”衆”が集まった「ヤマト」であると感じてしまう風景は日本の各地にあります。木枯らしが吹くこの季節、山々の肌は赤や黄色やオレンジなどで色づいて奇麗な装いを見せています。そんな贅沢な景色を車窓に眺めながら、徹夜明けの僕は博多行きの新幹線の中でいつのまにか眠りについていました。岡山駅へ降立つと今回の企画者であるキヨ君が迎えにきてくれて、車で北へ10kmほど走った山の中腹にある温泉施設レスパール藤ヶ鳴を目指します。今回弾き語りで呼んでくれたのは”GOODTIMIN' REASON”というイベントで、会場は温泉プールを利用して催されていました。プールの上にステージを組んである為か、天然のエコーが効いた異空間で、ちょうど能楽堂の舞台の下に壷を設置して響かせる原理と同じ働きをしている様でした。建物自体も変わっていて、ガラス張りのトーラスでなんとも不思議な場所でした。あいにくの曇り空でしたが、出演バンドやDJ陣は地元や近畿方面からかっこいいコアなメンツが揃っていて、レゲエやアフリカや中南米の音楽が聴けて楽しかったです。夜は割りと早く更けたので、翌日は鬼退治伝説を持つ備前の国を散策することにしました。と言うのも“記紀“(古事記と日本書紀を併せた呼称)にも登場するあの吉備津彦を祀る神社があることを知っていたからです。「吉備中山」という、頂きに環状列石を持つ神山を背に鎮座する、その名も「吉備津彦神社」がそれでした。名前から察するに古代の山陽地方に栄えた吉備の王である事が伺えますが、吉備津彦はそもそも隣接する部族である「温羅(ウラ)」という鬼を退治してその土地の主になります。神話では天孫族に仲間入りしますが、古代の吉備の王で代々受け継ぐ王号であったと思われます。おそらくは製鉄という温羅の技術が欲しかった朝廷に協力したかたちをとった人達なのでしょう。境内には勿論天津神(天孫族の神)も祭られていますが、亀島、鶴島があり、大きな石灯籠があり、本殿の棟の先端には置千木があり、多分に×マークをモチーフにした狗奴の色が濃く見られます。同時に近くには人頭蛇体の製鉄の神、宇賀(ウガ)の神を祀る宇賀神社もあり、ペルシャ語で“太陽を祈る“という意味を持つ古い稲荷神社もありました。つまりアラハバキを奉ずる製鉄民や、太陽と月を拝み人工造山を作る技術者集団がいた訳です。このように生きる古墳と言われる神社は多くを語ってくれています。帰り際に名前に釣られて「造山古墳」に行きました。丘を削って作られたという大きな前方後円墳や石室に装飾を持つ円墳など6基が点在していて、そこに古めかしい集落が密集しています。狭い路地を歩きながら家々の白い壁を見ると三角や×マークを連続させた模様がありました。銅鐸や土器についているものと同じような模様です。そして驚いた事に、前方後円墳の頂きには荒神さまを祀る社がたたずんでいます。荒神さまとはアラハバキさんの事で、ルーツを中東にまで遡る事が出来る古い神です。ヤマン(現イエーメン)のアーラヴィ族が携えてインドに入り、アーリア人の侵攻によって難民となり各地に散っています。それが雑多的な仏教徒によって中国北西部の狗奴に伝わり、シルクロードを経て縄文末には九州にも国を作ります。中世には武蔵の国一の宮氷川神社に祀られ、民衆のあつい信仰を集めます。そんな荒波吐さんにここでも出会うことが出来ました。夕方の岡山駅で木枯らしに身を縮ませていると、東京行きののぞみがやってきました。桃太郎のルーツに触れる事が出来た僕はこんな事を回想しながら、またいつのまにか眠りについていたのでした。今回もいろんな方達のお世話になりました!ありがとうございました!また会いましょー!!!

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